わがオープンガーデンには2種のブナが植わっています。日本には2種のブナしかありませんが、一つは東日本の多雪地帯、主に日本海側に多い「ブナ」、他の一つは太平洋側の積雪の少ない地方に分布する「イヌブナ」です。あたまにイヌとつく植物名はかなり多いですが、その名を呼ぶときに私は少しいやな気持ちになります。この命名は何とかならないものでしょうか。もちろんイヌが悪いわけではありませんが、名前に付くとそれは劣ったものという意味を感じ取るのです。この気持ちはたぶん私だけではないと思います。生き物に優劣はないし、有用かそうでないかは人間が勝手に決めたもの、ぜひ改名してほしいものです。
さて、2種のブナですが、どちらも私が山で拾ってきた実を植えて育てたものです。ブナの方は1995年10月下旬に会越国境の浅草岳に登ったとき、山麓のブナ林(叶津の沼ノ平)で採取したものです。この年はブナの実は豊作で100個以上の実を拾って山の知人50人くらいに植えてみてくださいと郵送したものでした。そのうちの一粒が育って、いま高さが7~8mになっています。もう一本のイヌブナの方はこの前年の1994年11月下旬埼玉県東秩父の釜伏山の山頂で拾った実によるものです。始めはポットで発芽させて、徐々に鉢を大きなものに交換してきました。このころはブナの移植や植林はできないといわれていたのでそうしたのです。いまではここ岩櫃で元気に育っています。岩櫃山にも天然のイヌブナがたくさんあって太いものもあります。ここはモミ・イヌブナ群落と分類される森林で周囲はモミ、コナラ、イヌシデなどが混在している山林です。急斜面なのでおそらく昔から保安上あまり手を加えていない自然な林と思われます。これに対して雪国のブナは一面のブナ林といった景色が多く、ブナの純林(極相林)になります。
ブナとイヌブナの違いはよく葉脈(側脈)の数や樹皮の違いがあげられます。
左の2枚がイヌブナ、右はブナの葉です。ほとんどどちらも同じくらいの脈数です。これだけでは決定的なことはいえないようです。一般に10前後はブナ、15前後はイヌブナとされているようです。それにしてもブナの葉は美しく均整がとれていると思います。葉脈のところが少しくぼんでいて軽く波打つ様子はごく普通の葉のようでブナ独特だと思います。

つづく