樹木の教科書  ちくま 文庫  舘野正樹著

全カラー写真による樹木に関するエッセイです。教科書と書名にあるけれど、 いわゆる 教科書的なものではなく、 研究による新しい知見や 現在の研究の限界、解明されていない 多くのことも知らせてくれます。特に ショッキングであったのは 白神山地のブナ林 は もともとヒノキや ヒバ 、ブナの混交林であったものが ブナ以外のものは有用な木材として切り出してしまい 、現在のようなブナの極相林になってしまったというのです。 私は生物学的な遷移によって徐々に ブナの純林になったのかと思っていました。しかし、そうではなく、 江戸時代に 人為的に変えられた森だったということが実情のようです 。年貢として納めた書類に伐採された有用な樹種の量が記されているそうです。

この本に添えられている写真はみな著者の撮影によるものらしく 、山登りが大好きそうだという 著者の一部を垣間見るようです。 それもかなりグレードの高い登山を志向していたとことが 写真から伺い知ることができます。 私が訪れていた地域とも重なって、親近感をおぼえました。 著者は、葉の厚みの持つ意味についての研究の一端を披露して、私たちの 樹木のへの興味を誘ってくれます。 ユニークで興味深い本でした。