「ビルマの竪琴」  竹山道雄著  新潮文庫

「ビルマの竪琴」は子供雑誌であった「赤とんぼ」に連載された小説です。冒頭から子供に語りかけるような文体は柔らかな語り口となって大人にも心地よく受け入れられます。

 私は数年前上野の児童図書館で始めて「赤とんぼ」という子供雑誌がかってあったことを知りました。執筆者は著名な作家が多く、質の高い雑誌だったようです。

 実をいうと私は「ビルマの竪琴」は事実に基づいた話しかとおもっていましたが、創作だということを本書を手にしてはじめて知りました。それというのも最近は小説をほとんど読まず、ノンフィクションや自然科学、歴史といった真実は何か、という類の本ばかり読んでいたので、勝手にそう思い込んでいたのです。

 というわけで小説を読むのは久しぶりです。というより、正直にいうと小説を避けていたといったほうが正しいかもしれません。そんな私にこの本は、小説のよさを改めて気づかせてくれたとおもいます。終戦直後に書かれた本ですから何度も読むチャンスはあったのにめぐり合うのに時間がかかりました。数ヶ月前から、今度本屋さんに行ったら忘れずに買おうと思ってようやく読むことができました。
 この本が書かれた時代は(私が生まれた頃でもあります)食べることがすべてに優先する時代でした。荒れた世相にあって人にとって大切なものは何か、ということを子供たちに投げかけているようです。
 戦争というものを通してビルマと日本、さらにはそのほかの参戦国も含めた国々の文明と、戦争で国土を荒らされてなお、こころ静かで無欲な人々の文化の違いをまのあたりにして、われわれの奉じた文明というものがはなはだ浅薄なものに感じられたと主人公水島上等兵が隊長にあてた手紙にあります。

 その訴えは現在の日本人が戦後から築いてきた文化にも再考を求めているようにも受け取れます。