地衣類という身近にあっても、あまり関心を持たれない生物が、土壌生成に重要な役割をはたしていたらしい。それを近頃知って、地衣類というものが気になっていた。しかし、その名前もウメノキゴケくらいしか知らない。それも、梅の木についているのがあれば、たぶんそれがそうだろう、という大変お粗末なものだ。

つい先日、上野の科学博物館に数十年ぶりに行ってみました。ちょうど南方熊楠の生誕150周年記念企画展をやっていて、「100年早かった智の人」という、智の片鱗をかいま見てきました。彼の日記、書簡、筆写したノート、菌類図譜などの展示の中で、きのこの菌類、地衣類、藻類といった一見地味な研究が目を引きます。ちょうど私が関心を持ち始めた地衣類への導入にはちょうどよい企画でした。これを見なければ、このようなブログも書かなかったでしょう。博物館の売店で、地衣類のハンドブックを買ってきました。さっそくオープンガーデン周辺を調べてみると、けっこう着生物があるものだなあと思わされます。ところが、ハンドブックを見てもはっきりと、これだ、ととても断定できません(どんな分野でもはじめはそうですが‥)。とりあえずビギナーの鑑定です。

地衣類は菌類と藻類とが共生している生物で、藻類が光合成した養分を菌類が利用し、菌類は藻類に住む場所を提供する共生関係にあるようです。地球の陸地6%を覆っているといわれます。地球には5億年前まで、他の惑星と同様岩が風化して砂や粘土はあっても、土壌はなかったそうです。46億年の地球の歴史のうち、41億年間、地上に植物がなかったためです。最初の土はコケや地衣類の仲間の遺骸が土となったもので、これらは土や岩に菌糸を伸ばし、養分を吸収する。このとき、クエン酸やリンゴ酸を出して岩を溶かしリンやカリウムなどを吸収していたものと思われます。砂や粘土に遺骸などの有機物が混ざり合って、最初の地上での土壌作りに地衣類は重要な働きをしていたようです。

「地衣類はコケ類と誤解されやすい」といいながら、なぜ命名者は○○ゴケと名付けるのだろう。以下は、ケヤキ、サクラ、イヌシデについた着生物です。

ハクテンゴケ 白い点がばらまかれたように見える。

ヒカゲウチキウメノキゴケ  なんとも長い名前

フタゴウオノメゴケ

ナミガタウメノキゴケ

コナイボゴケ