今回は「大地の五億年」せめぎあう土と生き物たち 藤井 一至著 ヤマケイ新書 です。
著者はまだ若い土壌学者で世界の大地にスコップで穴を掘り、実地を教師とする行動的な研究者です。私はこういう人が好きです。書斎や研究室の研究では面白くない。
私はオープンガーデンを始めて土壌をもっと知らなければと思いました。この本はそういう私にとってうってつけの本でした。素人にもわかりやすく、しかし易し過ぎず最新の情報を学べるこの分野の本はこれまでになかったのではないかと思います。

書名のように土壌は五億年前から作られてきて今日に至っている、といようです。原始的な生物の誕生が38億年前、とすると大地ができたのはずいぶん”最近”という印象です。もっとも初期の生物はほとんど海の中だけでしたし、大地ができて十分な酸素が補償されてから生き物は地上に上がってきたのですから五億年というのはなるほどその通りなのでした。
本書の言う五億年間を少し乱暴にまとめますと、まず、コケと地衣類が自ら出す酸性物質で岩を砕き溶かして最初の土を作り、さらに、四億年前にシダ植物が本格的に土壌を作り出した。二億五千年前、樹木はそれを分解するキノコの登場で森の土の物質リサイクル機能が確立された。最も土はこれ以外にも岩石の風化作用や火山活動でも生成されるから、土壌とは一般に岩石が風化し植物遺体が混ざったものというそうです。
花を育てていて土壌への関心の一つは土壌の酸性化です。地球の乾燥地帯の多くはアルカリ土壌で、湿潤な地方は酸性土壌が多いそうですが、これは土壌の生成過程を見ても納得できることです。植物は自ら養分を得るために酸性物質を根から放出して必要な養分を得ているのですから植物が生えていれば土壌は酸性化してくるということを知りました。酸性雨の影響はその理由の一つであり、植物による酸性化が主であるといいます。
花を育てることでもう一つの関心事は、水はけと保水性です。多くの植物は相反する二つの性質の両方をそなえている土壌を好みます。しかし残念ながらこの点についてはこの本ではほとんど触れていません。
これは、園芸で最大の関心事ですが我が家の庭土が水はけがよいのか悪いのかさえいまだに正確に把握できていません。いわゆるフカフカの土ではなく、重く硬く締ってしまう土です。これの改良に日々格闘しているというのが私の園芸の実態かもしれません。
この本は、土壌ってとても面白いということを教えてくれました。ときどきページをめくっていつも手元にある本の一つになっています。私の本はたくさんの線が引かれているので後で調べたいというときにはとても便利です。