このブログで趣味としての読書に触れたことはありません。カテゴリーを新設しなければなりません。読書は私にとって趣味というより、日々欠かせないものです。いま読んでいるのは「デルスウ・ウザーラ」沿海州探検紀行 アルセーニエフ著です。この本を読み直そうとしたのは、同じ著者の「ウスリー紀行」を読みたかったのですが、容易に手に入りそうもなく、そこで、ウスリー河流域を探検行に含むこの本を読み返すことにしたのです。出版年は昭和50年です。
この探検が行われた頃はすでにシベリア鉄道も開通し、アムール川(黒竜江)支流のウスリー河沿いにも鉄道が敷かれていました。しかし、鉄道沿線を離れればもうそこは未開の大自然で、広大な地域が徒歩でしか移動できず道も満足にない地帯でした。書名の「デルスウ・ウザーラ」は著者の探検行で巡り会った現地人です。我々が既に失って久しい自然の中で生きてゆく能力を持ち、魅力あふれる実直な人物です。
本の表紙がそれで黒澤明が映画用に書いたものでしょう。本文中の挿画も同様です。
彼はツングース系のナナイ人(ゴリド族)で、アルセーニエフの探検行には欠かせない人物です。
行進が開始された日のエピソードに次のような文があります。
「デルスウが私のところに来て、ターズの家に一日泊まることを許してくれといい、翌日の夕暮れまでに我々に追いつくからといったが、私は彼が我々を見失うかも知れぬという心配を告げた。するとゴリドは大声で笑い、こういった。「あんたは針ではない、鳥でもない、飛べない、土の上を歩く、足が踏む、跡が付く、わしには目がある、見る」‥といい、休憩した場所も、路がとぎれて路を探したことも彼は知っていた。こんな彼だからこそ探検が終わって高齢になったデルスウを町に住まわしたが、街住まいにはいろんな禁制があることが不満であった。街では自分の欲するようにではなく、他人の欲するように生きなくてはならないと理解はしたようです。
薪も、水も金で買い、木を切ってはいけない、たき火をしてはいけない、銃を撃ってはいけない。彼は街で生きて行けない自分を知ることになりました。
私自身もペットボトルに入った水を100円も出して人々が買うのを見て、おかしな世の中になったものだと思ったことを思い出します。
この本を読み直すきっかけは、直前にこの地域に隣接する旧満州北部の探検記、朝日文庫「大興安嶺探検」今西錦司編。という戦前のアムール川源流の京大の探検記を読んだからでした。この本はまた次回に。
現在の沿海州の景色が見られます。https://www.google.co.jp/maps/place/%E3%80%8C%E8%99%8E%E3%81%AE%E5%91%BC%E3%81%B3%E5%A3%B0%E3%80%8D%E5%9B%BD%E7%AB%8B%E5%85%AC%E5%9C%92/